(文責:佐藤賢紀・渡邊満久/AsiaWise法律事務所所属、インド駐在中)
インドにおける新型コロナウィルス(COVID-19)への対応に関して、4月6日(月)時点の情報をお届けします。
AsiaWise Groupでは、今後も継続的に、メールマガジン形式で、随時、最新の情報をお届けする予定です。ご不明な点がございましたら、お気軽にご連絡下さい。配信をご希望の場合は、サイトの登録フォームからご登録下さい。
1. 会社法上のコンプライアンス規定の緩和について
1.1 インドでは、3月25日から4月14日まで21日間、ロックダウンが実施されています。突然の決定であったため、日系企業の中でも、オフィスに入ることができず、テレワークの準備が間に合わないという企業も多数ありました。また、オフィス勤務の従業員にPCの貸与が間に合わず、テレワークをすることができないという話も聞いております。なお、在インド日本商工会及びジェトロニューデリー事務所が実施したアンケートでは、73%の企業が「事務所を閉鎖して在宅対応しており、事業に支障が出ている」と回答しています。
1.2 インド政府は、3月24日付け通知により、会社が遵守すべきコンプライアンス義務の一部を規制緩和しています。例えば、インドの会社法上、取締役会は、前回の取締役会から120日以内に開催される必要がありますが、2020年9月30日までの間は、この期間を60日延長し、180日以内の開催で足りるとされています。
また、全ての会社は、会計年度ごとに、1人以上の取締役が182日以上インド国内に滞在する必要がある旨規定されていますが、昨年度(2019年4月から2020年3月まで)はこの義務を免除されます。この他、年次報告書や財務諸表など、一定期間までの提出が義務付けられている文書について、提出時期が遅れた場合の追加料金等が免除される等、暫定的な規制緩和措置が実施されています。
2. 賃金減額の禁止について
また、インド政府は、3月29日付で、使用者に対して、労働者の賃金減額を禁止し、通常通りの支給日に賃金を支払うことを義務付ける命令を発令しました。この命令は3月24日付で発布されていた勧告(Advisory)とは異なり法的拘束力を有するものなので注意が必要です。
3. 破産倒産法申立ての最低額の引き上げ
新型コロナウィルスの影響により、多くの会社の経済活動が停止を余儀なくさせられているところ、大きな経済的損害が生じることが予想されます。そのような企業が大挙して破産申立てに至ることを防ぐため、破産倒産法の申立要件となる未払債権の最低額が、10万ルピーから1000万ルピーに引き上げられました。破産倒産法に基づく申立ては、債権回収の一手段としても利用されてきましたが、この未払債権額の大幅引き上げにより、利用のハードルが大幅に上がりました。今後しばらくは、破産倒産法に頼らない、厳格な債権管理が必要となることが予想されます。
なお、財務省長官からは、あわせて2020年9月まで、破産申立ての受付を停止することも提言されていますが、現段階では、この点についての政府からの正式な命令等は発令されていません。
4. インド全域の都市封鎖(ロックダウン)による現地日本人への影響
4.1 現地駐在員及び家族の日本への帰国状況については、前掲のアンケート(上記1.1ご参照)において、駐在員本人について、約半数の企業が全員又は一部が帰国済み(予定者含む)と回答しています。同様に、家族については75%、研修又はプロジェクト要員については60%が帰国済み(予定者含む)とされています。
4.2 日本のニュース等でも報道されているとおり、ロックダウン当初、警察官による外出中の市民に対する暴行が問題となりました。その後程なくして、デリバリー業者等、外出を認められている者について、通行を認めるよう各州から通知がなされており、状況は改善している模様です。もっとも、今後も状況は予断を許しませんので、在留邦人の皆様は引き続き警戒を怠らないことが必要です。
4.3 また、インド全土でのロックダウンにより、特にデリー近郊以外の都市に滞在している日系企業の駐在員及び家族の皆様のご帰国が難しい状況となっています。そのため、航空会社、各地の大使館・総領事館、商工会、日本人会が、臨時便の就航を要請し、インド当局と調整しています。ANAは、ムンバイ発の臨時便運航を調整中とのことであり、4月第2週末の可能性があるとのことです。また、JALは、バンガロール発の邦人救済臨時便の運行を調整しており、こちらも、政府許可がおりた場合には、フライトは4月第2週末になる見込みとのことです。最新情報については、各地の大使館、日本商工会、日本人会からの情報をご参照ください。
4.4 他方で、食品加工や医療器具等は、必需サービス(Essential Services)として、営業が認められています。これらの産業分野において、工場やオフィスの稼働を再開するには、Essential Servicesとしての営業許可や車両の通行許可を取得することが必要です。許可取得に際しての法律面でのサポートが必要な場合、ご遠慮なくご相談ください。
5. インド国内における新型コロナウィルスの症例数
インド国内で確認されている新型コロナウィルスの症例数は、4月6日IST9:00時点で、4,067例(死亡109例)と報告されています(https://www.mohfw.gov.in/)。