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早稲田大学ビジネススクール講義登壇のご報告

2019年10月30日

(文責:渡邊満久)

 先日、早稲田大学ビジネススクールにおいて、AsiaWise代表の久保が、「Legal Issues in Digital Era」というタイトルで、ゼミ形式の講義を行いました。これは留学生を対象とする連続講座の1つとして行われ、昨年度に続き2度目の試みとなります。今回は、今年度前半の講義です(後半は2020年1月実施の予定です)。

 昨年度の講義から既に9ヶ月が経過しているため、今回の講義に先立ち、講義用の資料にもアップデートが施されました。主なハイライトは次の2点です。

 まず、オンラインプラットフォーマーによるデータ独占の問題です。私たち一般消費者がオンラインプラットフォーマーの提供サービスを使えば使う程、プラットフォーマーにデータが次々と蓄積されていきます。彼らはそれを利用して更なる利益を得ていきますが、私たち一般消費者の手元には、そのようなデータは蓄積されません。この問題については、世界的に、個人データ保護法ではなく競争法の適用可能性という視点から議論されています。

 2つ目は、データの自由な流通を目指す日米欧と、データローカライゼーションを推進する中国等の陣営の、対立の問題です。今後数年かけて、第三国を巻き込みながら、世界の潮流を形作る各陣営の動向からは目が離せません。特に日本について述べれば、自由な流通を目指すとしながら、ITビッグジャイアントに対する規制と日本企業の保護・躍進をどのように両立させていくのか、興味深いものとなるでしょう。

 ところで、冒頭でも述べたように、この講義はゼミ形式で行われました。久保から留学生に対し解説と質問が行われ、留学生がそれについて考え発言を行うという、双方向スタイルです。留学生からは相当積極的かつ鋭い発言がなされ、活発な議論が交わされていました。このスタイルが成立するためには、自分の考えを堂々と発言できる学生が、クラスに一定数いる必要があります。

 その様子を見ていると、日本の法科大学院教育においても、このような本当の意味での双方向型の教育がなされる講座が、少なくともいくつかはあるべきなのであろうと考えさせられました。世界のビジネスシーンで活躍するビジネスパーソンとなり得る留学生たちがそのような議論を交わしているなか、そんなビジネスパーソンを助ける存在とならなければならない私たち日本の弁護士も、同様の鍛錬を経ておくべきように思い至りました。

 司法試験合格という目的があるなかでの制限はあるのだろうとは思いますが、日本の法科大学院生も、少なくとも積極的に考えて発言しようとするマインドセットは持った方がよいと、かつて法科大学院生であった私も過去の反省を迫られたところです。