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早稲田大学講義報告 - テクノロジーと法の関係とは?-

2020年1月28日

(文責:久保光太郎)

去る1月15日、早稲田大学ビジネススクール(MBAコース)にて、「Legal Issues in Digital Era ~The Future of Rule Making(デジタル時代の法律問題 ~ルールメイキングの将来)」というテーマで講義を行いました。米国、中国、欧州等、世界各国から集まった学生たちを相手に、90分間英語で議論をすることができ、とてもよい刺激を頂きました。

昨年も同様のテーマで講義をしたのですが、今回は、その後1年間の社会・テクノロジーの変化を踏まえ、内容を大幅にアップデート致しました。昨年10月には、同じクラスでプラットフォーマーによるデータ収集に伴う問題についての講義を行っていたので、今回は以下の問題を取り上げました。

① 自動運転(特にSAEレベル4及び5)導入後、既存の規制、責任の枠組みはどのような変容を受けるか。AIを利用することにはどのようなリスクがあるか(学習データの収集の限界の問題等)。

② 顔認証技術は、どのようなリスクを有しているか。特に犯罪予測、捜査に利用された場合、どのような危険があるか(AIに人間のバイアスが混入する問題等)。

③ SNSを始めとするデジタル・メディアにおいてフェイク・ニュースとどう向き合うことが必要か。フェイク・ニュースはなぜ危険なのか(思想の自由市場とフィルター・バブルの問題)。誰が取締りの責任をもつべきなのか(シンガポールのAnti-Fake News法等)。

テクノロジーの進化に伴って社会が変化する中、法律家の役割は非常に重要です。法律家はすでに起こった事象に対して受け身で対処するばかりでなく、将来のリスクを予見し、あるべき法律制度についても議論することが必要だと思います。

新しいテクノロジーにまつわる問題を議論するためには、すでに制定されている法律(実定法)の解釈を超えて、法の役割(Jurisprudence)、社会の在り方に関する政策論、さらには哲学や倫理の問題についても、幅広く考える必要が出てきます。

また、将来の問題をより深く理解するためには、私たちの次の世代がどのような時代を生きるのかを想像しつつ、同時に、過去の叡智(歴史)に対して目配りすることも必要です。今回の講義では、自動運転との関係で、19世紀において社会がいかにして鉄道技術を受け入れたか、顔認証技術との関係で、19世紀において犯罪学者(ロンブローゾ等)がどのような研究をしていたのかといった歴史にも言及しました。

今回はMBA留学生と一緒に議論しましたが、私としては、上記のようなテーマについて、是非、法律実務家や法律を勉強する学生とも議論したいと思っております。ご興味がある方は是非お声掛け下さい。