(文責:田中陽介)
先日、関西特許研究会において、AsiaWise IPチームChairでインド在住の奥啓徳が、「インドにおける知財エンフォースメント最新動向」というタイトルで、講演を行いました。関西地区在住弁理士の約半数が入会する研究会の会合で、日本弁理士会の継続研修として認定される見込みです。「インドへの知財投資の重要性」、「インドにおける知財分野の最新動向」、「インド知財実務家からのアドバイス」という3部構成で、計2時間の講演となりました。
第1部の「インドへの知財投資の重要性」では、インドという国の概要を改めて説明するとともに、日本からインドへの投資動向や日本企業からインド特許庁への特許出願状況について、データに基づいて解説しました。また、インド在住者の視点から、現在インドで起きている変化やインド投資で今後注目すべき分野について紹介しました。
第2部の「インドにおける知財分野の最新動向」では、権利化に関する最新のトピックのみならず、近頃情報が開示されて注目されている知的財産審判部(IPAB)の現状についてお話ししました。多くの技術委員のポストが空席で未処理案件が積みあがったIPABに対して、現状取り得る手段を提案するとともに、インドでの特許訴訟や模倣品取り締まりに関する様々な事例を紹介しました。
第3部の「インド知財実務家からのアドバイス」では、インド特許出願の過程でどのような請求項補正が認められるのかについて、場合分けをしながら丁寧に解説し、各場合において取り得る手段を紹介しました。また、ブランド保護のための著名商標制度についても触れた上で、インドを活用した訴訟戦術についても提案しました。
インドの法律事務所主催のセミナーでは、多くの場合、法改正の説明や新制度の解説に終始されがちです。しかし本セミナーでは、実際にインドに身を置き日本企業の知財案件対応を支援してきたプロフェッショナルの立場から、多角的に実務的なポイントを論じることができたのではないかと考えています。今後知財投資をしていく価値のある国として、インドについて考えるきっかけとなれば幸いです。