(文責:江 广嘉)
我々AsiaWiseは、11月12日から17日にかけて、香港・深センへ視察に行ってまいりました。今回は、深センでの視察についてご報告いたします。
深センがある広東省といえば、昔からのものづくりの場所だとイメージされる方も少なくないかもしれません。しかしここ数年、深センでは、政府優遇措置の減少、コストの上昇、マーケットの飽和により、外資企業(特に製造業)の撤退案件が増えているという話を、訪問先の現地法律事務所などで耳にしました。広東省に製造拠点を置いた多くの日系企業も、東南アジアへの移転を検討、一部実行しており、「脱中国製造」がトレンドになっています。
他方で、深センについては今年、総企業数が200万社の壁を越えており、中国一のスタートアップ密度があると言われるなど、経済発展が続いているといえる状況です。こうした状況と「脱中国製造」トレンドとのギャップの理由としては、中央政府による“産業チェーンアップグレード”の指導方針に応じて、広東省が広州・深セン・香港など(いわゆる大湾区)の連携を進めた結果、単なる製造拠点ではなく、技術開発から生産まで可能な産業チェーンとして発展し始めているという現状が挙げられます。
そうした産業チェーンのなかで、深センの主な役割はイノベーションです。深センの街を歩いてみると、すでにいたるところでハイテク技術が採用され、馴染んでいることが分かります。中国国産のEVのタクシー・バス、顔・車両認識ができる監視カメラネットワーク、どこでも使えるモバイル決済、なんでも買えるEコマースサイト……深センでは、政府から一般人まで、新技術に興味を持ちいち早く取り入れる傾向があり、新たなプロダクトが受け入れられやすいマーケットだと実感いたしました。
この数日間の訪問のなかで、現地のいくつかの企業から、技術の研究・獲得のために日本企業を訪問したいという要望を受けました。現地の知的財産事務所によると、深センにはイノベーションは生まれているものの、一部の最も重要なコア技術までは獲得できていないという課題があるとのことです。つまり、高い技術を持つ中国未進出の日本企業には、中国企業とコラボレーションするかたちで中国のマーケットにスムーズに進出し、プレセンスをより一層高めるチャンスがあるということです。もっとも、自社の技術が適切に保護されるのかという懸念を抱く企業も多いため、そこをどう乗り越えていくかが、今後の日中企業間コラボレーションにおける課題となると思われます。
また、各種法分野においても、こうしたトレンドが見てとれます。汚染解消・環境保護に関する法律等、伝統的な製造業に関連するもの、反不正当競争防止法修正案・2020外商投资法(2020実行予定)等、投資に際する安全・便利な知財・投資環境を作るもの、中国サイバーセキュリティ法・重要情報インフラ安全保護条例(草案)・個人情報安全規範(草案)等、テック・ITをベースとした次時代インフラの完備を目指すものまで、深セン・大湾区の、新技術を中心として次時代に発展するというモデルを支える新な法律の整備も、徐々に進められています。
広州出身の私にとっても、2年ぶりの深センは、2年前にはほとんど存在もしていなかったようなビジネスが業界ごと流行るなど、さらに大きく変化しているように感じられました。深セン・大湾区の発展のバンドワゴンに、一刻も早く乗りたいと思っております。
我々AsiaWiseも、アジアの法律事務所として、深セン・大湾区で新たなかたちで活躍していく日本企業、日本進出を試みる深セン・大湾区育ちの企業に対し、リーガルサポートが提供できることを、楽しみにしております。