(文責:佐藤賢紀)
去る6月12日、「インドのシリコンバレー」と呼ばれるバンガロールで開催された、イシン株式会社主催のIshin Startup Summit BANGALORE 2019にて、代表の久保が、ゲストスピーカーとして登壇してまいりました。このイベントは、「インド×日本」をテーマにした、インドスタートアップ企業と日本企業のコラボレーションのためのサミットとのことで、日印あわせて30名以上の参加者がいらっしゃいました。
近時、インド発のユニコーン企業(評価額10億ドル以上)であるOYOが日本の不動産業界に進出するなど、インドのスタートアップ企業の躍進には目覚ましいものがあります。そのインドの中でも、特にバンガロールは、元々大都市であったデリーやムンバイとは異なり、IT企業の躍進によって発展を遂げてきたという特徴があります。
既にスタートアップ企業の数ではインドで一番、世界的に見ても、シリコンバレー、ロンドンに次いで世界で3番目に多い都市と言われており、2013~2018年の6年間で7,200~7,700社のスタートアップ企業が生まれています。
久保は、「インドスタートアップ企業の日本進出」というテーマのパネルディスカッションにて、お話をさせて頂きました。久保は、10年以上に渡り、アメリカ、シンガポールその他多くの国の企業と仕事をしてまいりましたが、その経験に照らしても、インドと日本は、非常に極端な特徴を持った経済圏だといえます。その両国が協調することができれば、大きなシナジーが生まれるはずです。他方で、そのシナジーを生み出すためには、それぞれの大きな違いを乗り越えた相互理解が非常に重要です。
インドに日本企業が進出していく、あるいは、インド企業と仕事をするためには、相互の違いを理解し、譲れない主張と受け入れるべき要求を使いわける必要があります。
例えば、スタートアップに限らず、インド企業とビジネスを行う場合、ミーティングにて種々の事項が話されたにもかかわらず、後から決定事項を覆されたり、議論が拡散して結論が不明確になったりすることがよくあります。ここまでのことが決まったということを議事録やMOU等により書面で残し、積み上げていくことが必要です。
これに対し、現地に居を構えるベンチャーキャピタル(VC)の方々からは、日本企業の特殊性、例えば、日本企業はビジネスにおける決断、特に社内の調整に時間がかかることや、社交辞令のように何でも「興味がある」と言って、インド企業からの信頼を失う場合があるというお話もありました。
参加者の日本企業の方の中には、インドに拠点もなく、まだ市場の情報も無いことから、まずはVC経由で投資して情報を収集しつつ、本業のインド進出のタイミングを伺うことを検討されている方もいらっしゃいました。
すでにバンガロールでは、Amazon、Facebookといった大企業、Accel、Sequoia Capitalといった著名なアメリカのVC、更には、アリババやテンセント等の中国企業も、有望なスタートアップに対してどんどん投資を行っています。アメリカのシリコンバレーや中国の深センのように、世界には多くのユニコーン企業が生まれるエコシステムがありますが、現地における日本のプレゼンスは高いとはいえないのが実情です。もっとも、バンガロールはいまだ発展途上であり、入り込む余地があります。また、ソフトバンクが同地において最大の投資家の一つであることや技術力(特にハードウェア)と投資に対する期待感から、インド人の対日感情は非常に良好です。
海外のスタートアップ企業とのオープン・イノベーションをお考えの企業の方は、是非一刻も早くバンガロールを訪れて、この熱気を体感すると共に、どのような進出や協業の可能性があるかをご検討頂ければと思います。