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【ニュース】経営法友会月例会「現実味のあるアジア・コンプライアンス」セミナー登壇のご報告

2019年9月19日

(文責:松村正悟)

 去る9月12日、AsiaWise法律事務所代表の久保光太郎弁護士が、経営法友会月例会において「現実味のあるアジア・コンプライアンス」と題したセミナーを行いました。本セミナーでは、質疑応答も活発に行われ、セミナー終了後には名刺交換や個別の質問を求めて参加者の方々が久保弁護士のもとに長蛇の列を作るなど、大盛況でした。ここでは、簡単にではありますが、その内容をご報告いたします。

 「コンプライアンス」というと、とにかく全てについて完璧に、100点満点の体制を実現しなければいけないのではないか、というイメージが付きまとうところですが、この「100点満点を目指すべき」という常識を疑ってみよう、というのが本セミナーのコンセプトのひとつです。たとえば「100点満点」を目指そうと、各国における法律や規制について、本社レベルで網羅的にリサーチして把握しようとすれば、恐ろしいほどに膨大なコストがかかることになります。しかも、それほどの時間と費用を投じて出来上がったリストは、次の日から陳腐化していくのです……。

 そこで「現実味のある」コンプライアンス、というコンセプトが極めて重要になります。100点満点を目指して結果30点に終わってしまうより、70点を目指すことでうまくいくこともある、というコンセプトです。そのためには、これまでのコンプライアンスにおける固定観念に、「トップダウン型からボトムアップ型へ」「上から押し付けるのではなく現場目線で」「大上段の法規制から出発するのではなく個別のインシデントから出発する」「規制ベースからデータベースへ」といった転換を巻き起こしていくことで、合理的・効率的なコンプライアンス体制を構築し、ひいては「コンプライアンス疲れ」のない持続可能性あるコンプライアンスが実現できるのではないでしょうか。

 また、そのためにはデータ/テクノロジーをコンプライアンスに活用すべきとの指摘は、近年のリーガルテック隆盛の流れにおいて、極めて重要な指摘だと思われます。もはやリーガルテックは契約法務だけではなく、企業のコンプライアンスの常識をも一変させうるポテンシャルを秘めているものだと認識する必要があるでしょう。

 さらに「アジア」においてこそ、「現実味のあるコンプライアンス」が重要だというのが、本セミナーのもう一つ重要なメッセージです。アジア新興国においては、法規制は必ずしも明確ではないうえに、依拠できるガイドラインも判例も解説書も決して豊富といえません。現地の専門家を頼ろうにも、弁護士がピンキリで信頼に値する専門家を探すにも一苦労という状況です。おまけに、「アジアの常識は日本の非常識、日本の常識はアジアの非常識」と言われるほどに、コンプライアンスに対する意識、マインドセットが違う……そんな現実が立ちふさがるのです。そのような環境では、「100点満点」のコンプライアンスを目指すことがそもそも困難であり、だからこそ、「現実味のあるコンプライアンス」というコンセプトは、アジアにおいてこそ重要な意義を持つというわけです。

 質疑応答を聞いていると、まさに講師の狙い通り(?)、コンプライアンスに対する固定観念を揺さぶられた方々もいらっしゃったようです。一方で、「現実味のある」というコンセプトは理解できたけど、具体的には何をすればいいのか……そんなお悩みの声も聞こえてきそうな雰囲気も感じられました。AsiaWiseは、アジアに進出する企業の皆様のより良いコンプライアンス体制を実現するため、今後もサポートをしてまいります。ぜひお気軽にご相談ください。