(文責:渡邊満久・佐藤賢紀/AsiaWise法律事務所所属、インド駐在中)
先週に引き続き、新型コロナウィルス(COVID-19)のインドにおける影響について、3月16日(月)時点の情報をお届けします。
AsiaWise Groupでは、今後も継続的に、メールマガジン形式で、随時、最新の情報をお届けする予定です。ご不明な点がございましたら、お気軽にご連絡下さい。配信をご希望の場合は、サイトの登録フォームからご登録下さい。
1. 日本人向けVISAの状況
(1) 3月13日のインド政府発表によれば、同日12:00(GMT)より、その国籍にかかわらず、インドに入国していない方の全てのビザの効力が停止されています。但し、外交官、国連や国際機関職員に発給されたビザ、またEmployment visa(就労ビザ)、プロジェクトビザ(以下、「就労ビザ等」といいます。)は対象外とされています(https://boi.gov.in/content/advisory-travel-and-visa-restrictions-related-covid-19-0; https://boi.gov.in/sites/default/files/u4/faq-covid-19.pdf インド大使館(東京)https://www.indembassy-tokyo.gov.in/jp/pdf/Revised_Travel_Visa_Advisory_13-03.pdf)。
(2) この点に関して、日本の外務省は、「日本時間3月13日21:00をもって,3月3日以前に発行された就労(雇用)ビザ及びプロジェクトビザ(同居家族分を含む)の無効化措置が停止されるため,現行ビザを使用してインドに再入国することが可能になります。」と発表しています。(https://www.anzen.mofa.go.jp/od/ryojiMailDetail.html?keyCd=81217)。3月16日付ムンバイ日本国総領事館のメールによれば、インド大使館も、就労ビザを所持してインドに駐在している邦人で国外に滞在中の方は,新しいビザの「再申請」は不要であり,現有ビザ及びeFRROによる再入国が認められると説明をしているとのことです。インド日本商工会には、既に駐在員ビザにより再入国が認められた事例も複数報告されています(https://jccii.in/archives/600)。
(3) なお、上記FAQにおいて、雇用ビザ等の所持者の帯同者(dependent:インドで同居している家族)で、現在インド国外にいる人については、入国が認められない旨明記されていますのでご注意下さい(https://boi.gov.in/sites/default/files/u4/faq-covid-19.pdf)(なお,帯同者についても、インドへの渡航について真に必要と認められる理由がある場合には,最寄りのインド大使館又は総領事館に相談することができるとされています。)。
2. インド国内における新型コロナウィルスの影響
(1) インド国内で確認されている新型コロナウィルスの症例数は、3月16日16時の時点で、114例(うち死亡例2例)と増加しています。
(2) インド国内の各企業においても、IT企業の多くが、従業員に対し、在宅ワーク(work from home)を指示又は推奨する等しています。街中では、マスク等により鼻や口を押さえている人の姿を見かけるようになっており、先週までと異なり、一気にインド人もコロナウィルスの感染を意識し始めている状況です。
(3) また、インド政府は、3月11日に、各州に対して、Epidemic Disease Act, 1897 第2条に基づき、緊急の対策を採るよう促しました。これに応じて、バンガロールのあるカルナタカ州を皮切りに、ムンバイ・プネのあるマハラシュトラ州、デリーNCR、グルガオンのあるハリアナ州と、各地で、感染が疑われる者の隔離や、モール、映画館、学校、パブ等の人が集まる場所の閉鎖について通知が発令されています。
3. 契約書における不可抗力条項(Force majeure)について
コロナウィルスの影響により、世界的に多くの企業の活動が減速しており、部品の供給の遅れにより生産ができない、顧客にサービスを提供できないという事態も生じてきているようです。この点について、多くの契約書には、天変地異や戦争等、契約当事者がコントロールすることができない事情により契約上の義務の履行が行えない場合に、そのような不履行から契約当事者を免責させる不可抗力条項(Force majeure)が記載されています。この条項に関連して、インド財務省は、本年2月19日、今回のコロナウィルスによるサプライチェーンの混乱が、「自然災害(natural calamity」として不可抗力条項によってカバーされる可能性があるとの通知を出しています。ただ、まずは、具体的にそれぞれの契約条項にどのように記載されているかが重要です。加えて、当該条項の発効のためには、相手方への通知等の手続きを要する旨規定されている場合もございます。製品の供給やサービスの提供が遅れているケースがある場合には、念の為契約書をご確認頂くことをお勧め致します。