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AW Alert India 10:インド・コロナ最新動向(2020/6/1時点)

2020年6月8日

(文責:佐藤賢紀・渡邊満久/AsiaWise法律事務所所属、インド駐在中)

 インドにおける新型コロナウィルス(COVID-19)への対応に関して、6月1日(月)時点の情報をお届けします。

 AsiaWise Groupでは、今後も継続的に、メールマガジン形式で、随時、最新の情報をお届けする予定です。ご不明な点がございましたら、お気軽にご連絡下さい。配信をご希望の場合は、サイトの登録フォームからご登録下さい。

1. 減給禁止規制の撤回について

(1) AW Alert India #5でお伝えしていたように、インド内務省(Ministry of Home and Affairs)は、3月29日付通達により、雇用主に対し、ロックダウン期間中の労働者の賃金減額を禁止していました。しかし内務省は5月17日付けで新たな通達を出し、3月29日付け命令(「旧命令」)を含むこれまでに発出された命令すべてについて、5月18日以降、効力が失われるとしました(「新命令」)。

(2) 旧命令の法的効力については、これまで裁判所においてもその有効性が争われていました。複数の企業や団体が、旧命令は違憲無効であると主張して裁判を申し立て、現在も裁判所に係属し審理されている事件がいくつもあります。この点、最高裁判所は、内務省による新命令発出に先立つ5月15日に、旧命令に基づき、政府に対し、強制的な措置を講じないことを定める暫定的決定を出しており、政府側の対応が注目されていました。

(3) 上記内務省の旧命令とは別に、雇用労働省(Ministry of labor and employment)からも、3月20日付けで同趣旨の通知が発出されていました。この雇用労働省の通知の効力については、上記新命令において言及されておらず、解釈上、若干不明確なままとなっています。しかし、内務省の旧命令の効力が否定された以上、雇用労働省の通知の効力も同様に失われたと解するのが自然であると考えます。

(4) 労働者の減給を一律に禁止する旧命令の効力が否定されたことで、現地で活動する日系企業としては、今後、より柔軟な人事政策を講じることが可能になったと言えます。もっとも、旧命令の効力が失われたからといって、労働者に対する減給を自由になしうるようになったと考えることは危険です。インド労働法上、解雇及び減給を含む不利益処分を下す場合、対象となる労働者について適用される法令、就業規則及び契約が定める手続及び条件に従う必要があり、その判断は労働者や契約ごとに個別具体的にしなければなりません。また、この先、連邦政府ないし州政府から一律禁止に代わる制限色を薄めた規制が出される可能性も、ゼロではありません。労働者に対して不利益処分を課す場合には、処分の時点での最新動向を見定めて対応することをお勧め致します。

2. ロックダウンの解除及び新たな命令について

(1) 当初3月24日に開始したロックダウンは、4月14日付け、5月1日付け、5月17日付けと延長されてきましたが、5月31日をもって解除されました。その上で、インド政府は、5月30日付けで新たな命令を発出し、「Unlock 1」として引き続きCOVID-19 の感染拡大防止に努めるよう求めています。

(2) これによれば、封じ込めゾーン(Containment Zone)に対する規制は引き続き厳格に行い、それ以外の地域については、3つのフェーズに分けた規制緩和を予定していることが公表されています。

  • フェーズ1:宗教施設・礼拝所/ホテル・レストランその他の接客業施設/ショッピングモールは、6月8日から再開を許されます。これに関しては、保健省(Ministry of Health and Family Welfare)がStandard Operating Procedures(SOPs)を発行するとされています。
  • フェーズ2:学校や大学等教育関係の施設については、州政府や利害関係者等の協議に基づいて、7月中に経過観察して再開に関する判断がなされます。この点に関しても、保健省からSOPsが発行される予定です。
  • フェーズ3:国際航空便、メトロ、映画館や体育館等の娯楽施設、社会・宗教・スポーツ・娯楽・遊興・学術・文化等を目的とする大規模集会については、今後の状況を見て判断されます。

(3) また、夜間(午後9時から午前5時まで)は、必要不可欠な活動以外の外出は引き続き制限されています。

(4) その他、各州は、必要に応じ、封じ込めゾーン以外の活動を制限できるものとされています。州内のどの地域が封じ込めゾーンに指定されているかとともに、各州の命令・通知により各種活動に制限が課されていないか、十分に確認することをお勧め致します。