(文:久保光太郎)
2月20日に開催された経営法友会主催「現実味のあるコンプライアンス」研究会において、講師として、「アジア諸国における現実味のあるコンプライアンス」をテーマにプレゼンテーションを行ってまいりました。
研究会では、アジア新興国で「100点満点のコンプライアンス」を目指すことは現実的でないことを前提として、「コンプライアンス」の常識を疑うことを出発点とし、「現実的に実行可能なコンプライアンス」のあり方を検討致しました。
アジア諸国の多くでは(もちろん国によりますが)法令改正も多く、法令の解釈にも幅があり得ます。現地弁護士のレベルなども考慮すると、法令改正に対する完璧なフォローアップを目指すことは、現実的ではないこともあります。
そこで、むしろ自社のインシデント事例を収集、分析して、具体的な問題点に対しアプローチしていくこと(データ重視)、利益相反規程を作成する等の事前対策を行い、不正行為やコンプライアンス違反に対する牽制を行うこと(牽制機能重視)、事前対策をしてもコンプライアンス違反は必ず発生すると腹積もりし、違反への対応を想定して準備しておくこと(有事対策重視)の3点が、重要なポイントになると思います。
上記3点のうち、特に1点めのデータ収集・分析については、AI等の最新テクノロジーを活用していくことも、今後考え得るところです。他方で、3点めの有事対策については、実際に起きてしまったコンプライアンス違反事例を解決するにあたって、最終的には人の知恵が物を言うところであり、AI等のテクノロジーでは代替できない分野であるように思います。そうした適切な役割分担と組合せこそが、今後のコンプライアンス業務の中心課題になってくると思います。
コンプライアンス体制については、その時々のトレンドや他社での体制を必要以上に意識するのではなく、各社が、自社の実態に合わせた体制を構築することが重要です。例えば内部通報制度の構築も、自社の実態を知るための情報収集ツールのひとつになると思います。
AsiaWise Groupでは、コンプライアンスに活用可能なテクノロジーの研究を含め、アジアのコンプライアンスの最新動向について情報を発信してまいりたいと思います。